先生に伺ったお話の内容を上手く表現することができず 申し訳なく思っていましたが、今回は先生が直々に案内文を作ってくださいました
講座では、甲野先生が昨年11月に気付かれた「普通のレベルから違う次元へと踏み込んだ世界に共通する、安易な協力によっては絶対実現できない原理」を武術の実技を通して体験していただけます。
この出会いが 今の世の中で起きていることをどう捉え どう向き合っていくのか そのヒントにもなるのではないかとおもっています
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「明らかな協力は仇になる」
平田寺での講座に寄せて 甲野善紀
私が独自の武術研究の道に入って今年で45年目となり、この2月6日で私も満74歳になります。これだけ長い間、武術の研究をしてきましたが、その私がいま初心者になっています。それは昨年の11月初めに私の武術の根幹となっている剣術の、その剣の使い方、つまり刀の操作法に関して何十年間も根本的に間違っていたことを痛感し、これまでは全く思いもかけなかった刀の使い方を何とか身につけようとしているからです。そして、その過程でいろいろな事を見えてきました。
今回、この思いもよらなかった基本の間違いに気付いた事から、現在「あたりまえ」「当然」「常識」と言われているものの中に、根本的な問題があるものがかなり含まれているのではないかという気がしています。何しろ私が11月初めに得た気付きは、現代剣道等はもちろん、古流の剣術においても当然と思われている常識の否定ですから、今の私は武道・武術の世界で剣を稽古している人達の99.9%の人々に向かってダメ出しをしているような事なのです。
それは、左右両手が助け合って木刀なり竹刀なりを使っているその事自体の否定だからです。つまり、「良かれと思って手伝っていること」そのものの否定なのです。この常識の否定がどれほど不可解で突拍子もないもののように見えたとしても、この事を否定して拓けた世界がどれほど思いもよらない働きのあることか!
これは禅の世界にも通じるものはあると思います。つまり、左右の手の協力を否定することは、同時にに普通のレベルの協力ではない異次元の協力への扉を開くものでもあるからです。
「顕と幽」とでも言うように、片手は実際にハッキリとわかる世界で働き、もう一方は陰といいますか、裏といいますか、無理に言葉にすれば「幽の世界から」とか「虚の活かし方」といったような、そこに在るけれども無い、そうした働きを拓くことになるからです。
そして、この事は気付いてみれば単に武術だけでなく、何かを作ったりする職人の世界でも、人と人とが協力して何かを成し遂げようとする様々な仕事においても、普通のレベルから違う次元へと踏み込んだ世界に共通する、安易な協力によっては絶対実現できない原理が見えてくるように思います。
この微妙な世界は何とも言葉になりにくいですが、武術の実技を通して体験していただけます。そして、その解説は思春期の娘を持った親が娘のためを思って、いろいろ世話をすることが裏目に出て、娘との関係がギクシャクしてしまう事をどうしたらいいか、といった例を出すことで、何となく理解していただけるように思います。
人間という非常に優れていると同時に愚かさも多く持っている悩み多き存在そのものを、体感を通して自覚することが今までになく直に出来るように思います。
そこで今回、この未だかつてなかった私の気付きを御縁のある方々にお伝えしたいと思い、平田寺の住職御夫妻に講座のお願いを致しました。この講座でどのような感想を伺うことが出来るかによって、これからの時代を拓く何かが見つかるような気がしております。御縁を感じられた方にお目にかかれます事を楽しみに致しております。
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甲野善紀先生をお迎えして
講座「明らかな協力は仇になる」
2023年2月21日(火)17:00~19:00
参加費 3000円
参加希望の方は お電話・メールにてお知らせください
◆メール yumikoon@gmail.com(長谷川)
◆電 話 0568-48-6806(平田寺)
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甲野善紀(こうのよしのり)
1949年東京生まれ。武術研究者。21歳の時「人間の運命は完璧に決まっていて、同時に完璧に自由である」という事を深く自覚し、以降「人間にとっての自然とは何か」を探求するため武の道に入り、1978年松聲館道場を建て、独自の武術研究の道に入る。2000年頃から、その技と術理がスポーツに応用されて成果を挙げ、楽器演奏や介護、ロボット工学や教育などの分野からも関心を持たれている。大相撲の力士や、日本を代表する柔道選手などとも、実際に手を合わせて指導をした。2007年から3年間、神戸女学院大学の客員教授を務めた。著作に『表の体育
裏の体育』(PHP文庫)、『剣の精神誌』(ちくま学芸文庫)、『自分の頭と身体で考える』(養老孟司共著、PHP文庫)、『薄氷の踏み方』(名越康文共著、PHP研究所)、『巧拙無二』(土田昇共著、剣筆舎)、『古の武術から学ぶ老境との向き合い方』(山と渓谷社)など多数。
甲野善紀という人物に影響を受けたと明言している人物は、スポーツ界では巨人軍で投手を務めた桑田真澄氏、卓球の平野早矢香女史、バスケットボールの浜口(現小磯)典子女史、
また医学の分野では軽井沢病院の稲葉俊郎副院長、小池弘人小池統合医療クリニック院長、精神科医の名越康文・名越クリニック院長。
またジャンル分けは難しいが、2016年に『数学する身体』で小林秀雄賞を受賞した森田真生氏は、現在独立研究者として、これからの時代をリードするユニークで説得力のある生き方を著書や講座で発表しているが「中学生の時に、甲野先生と出会う事がなければ今の自分はいない」と語っている。また、こうした教育の分野ではユニークな物理学の教師としてEテレなどにも出演、その言動がドラマのセリフにも使われた小林晋平・東京学芸大学准教授も、甲野善紀を人生の恩師と明言している。
また、甲野善紀自身が大きな影響を受けた人物として、まず挙げるのが、野口整体の通称で知られる野口晴哉・整体協会創設者だが、現在この協会のトップも務められている野口裕之・身体教育研究所々長とは格別親しい間柄である。武術の世界では、あまり交流を拡げていないというが、現在の日本の武術界でその実力は群を抜いている存在として知られる、黒田鉄山師範、光岡英稔師範は、共に「甲野先生に世の中に出していただいた」と感謝し、甲野善紀自身も、この方々に出会ったことで「どれほど得たものがあったかわからない」と深く感謝している。
平田寺との縁は2020年の12月に大変ユニークな養護学校の教員として知られていた、山元加津子女史との公開トークの場を提供していただいた事から始まる。以降、何度かお招きを受け、現在に至る。
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